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 歯の予防

 【歯は削らない方がいい】

健康な歯は削らない

健康な歯は削らない
歯科治療には歯の切削がつきもの。しかし歯は出来るだけ健康な部分には侵襲を加えない方が良いことは明白です。歯を削らない方が長期的に自分の歯を待たせることが出来ることは科学的に証明されています。


例えば、いままでの古い歯科の保険治療では、歯の神経(歯髄)を治療した後には、神経の無くなった部分にポストと呼ばれる銀の土台を嵌め込み、その周りを残っている歯質も含めて全周を削り取り、その上に銀の冠で覆うというやり方をすることが一般的です。
 全部を被せないと咬む力で残った歯質が折れるからというのが理由ですが、それだけではありません。
 古い方法ではセメントを歯牙と冠の間に置くことで、嵌合させて取れないようにしています。これを合着とよびますが、歯にくっつく接着剤ではありません。合着セメントは経年変化で唾液により溶解しやすいので、唾液に洗い流される様な見える部分にその境目を置くことは好ましくなく、歯と被せものの隙間が歯茎の中に入れるように深く削ります。

 このような多大な侵襲を加えると、歯質が無くなるだけではなく、中のポストが歯の根をクサビの応力で割ったり、エナメル質の無くなった弱い歯の根元から再度のムシ歯(二次う蝕)が進行したり。大きな金属の修復物による金属アレルギーが起こったりと、良いことが一つもありません。

 この古い技術は約50年前に確立された技術ですが、技術や科学が今のように発展していなかった当時では先進性にあふれていました。

 現在では、ムシ歯の診断と治療について50年前とは比較にならないほど学問も進み、技術も進化していますが、国の制度である健康保険診療のシステムが時代に追いついていないのです。いずれ変化は起こるでしょうが、最先端の技術は健康保険診療では享受することはできません。

 近年、日本は科学技術立国として技術を伸ばしてきましたが、歯科の分野では特に化学的技術とりわけ接着の技術が世界でも抜きん出ています。
 これは、エナメル質や象牙質、詰めるセラミックや樹脂への強固で長期的な接着を可能にしました。現在、ロケットや飛行機の機体の組み立てはリベット止めではなく、プラモデルのように接着剤でくっついているのをご存知でしょうか?信じられないほどの強度で接着する化学技術が歯の治療を変えようとしているのです。

 接着技術の進化により、神経を取った歯も周りを全部削らなくても良くなりました。
外れない様な形にする為に、余分に削る必要も無くなりました。
 樹脂やセラミックを歯に強固に接着をさせることで、歯を無駄に削らないことが可能になりました。

 【ムシ歯の治療は変わった】

ムシ歯の原因から除去

ムシ歯の原因から除去
虫歯は細菌や炭水化物の摂取、個々の唾液の量や性質、生活習慣などから起こる慢性疾患です。穴があいた後を埋めるだけでは、ムシ歯の結果として失われた歯質を修理したに過ぎません。
 ムシ歯の治療というとあのキーンとした音で削られて詰め物を入れるというイメージが強くあると思いますが、ムシ歯の原因を除去しなければ、また新しいムシ歯が出来たり、せっかく入れた詰め物の周囲から再度ムシ歯が発生することは明らかであり。つめただけではムシ歯は治っていないということを知る必要があります。

 現在では、ムシ歯の原因が個人により違うこと、進行の状況も違うこと、予防の方法も違うことが分かっています。

ムシ歯の学問、う蝕学(カリオロジー)では、まず第一にムシ歯の原因を探ることから始めます。これには唾液検査を行います。唾液を採取して細菌の培養や、唾液量/緩衝能の測定し、加えて食事や間食内容の問診、フッ化物の摂取などの多項目の診査を行い、患者さん個々のムシ歯の原因を突き止めます。

第二に改善点をピックアップしてホームケアプロフェッショナルケアの方向を決めます。

第三に既に穴があいてしまったものの修復を行いますが、予防的な修復をおこなうということで、金属による嵌めものを合着セメントで詰めるのではなく、樹脂やセラミックを歯質に接着して修復を行い、ふたたび詰め物の周囲からムシ歯になりにくい様な詰め方を当院では推奨しています。
接着とは合着のようにただ嵌合させているのではなく、歯質と詰め物が化学的に一体化して化学的接合ができるというものです。接着セメントはCRレジンという樹脂で出来ており、唾液には容易には溶解しません。
 しかも最近の接着剤は強度が非常に高いため、歯質を削る量を極端に少なくして(MI : ミニマルインターベンション)残存歯質の強度を保ちながら、詰め物と歯質で一体となり強度を高めることが可能になっています。

 さらに、初期のムシ歯に対する対応にも大きな進化があります。歯は口の中で絶えず食品からくる酸にさらされ表面が溶けますが、唾液の緩衝作用により再石灰化して解けた部分がもとに戻るというサイクルを繰り返しています。

 この再石灰化というのが初期のムシ歯治療のキーワードです。
 初期のムシ歯は再石灰化のプロセスを利用して歯を削らずに治すことが出来ます。
表面や歯の溝の白濁は初期のムシ歯です。フッ素を徐放する樹脂(シーラント)で溝を埋めたり、CCC-ACPと呼ばれる(商品名MIペースト)でミネラルパックを行うことにより、再石灰化を促すことが可能になりました。

エナメル質に限定する小さなムシ歯も、以前は削って詰めていましたが、ムシ歯の上からシーラントで封鎖することで、進行を止めることが出来ることが分かってきました。
着色程度のムシ歯は削ることなく封鎖をして経過を定期的に観察する方が良いと言えます。

もうひとつ、全く健康な歯についても、ムシ歯になり易い深い溝を予防的にシーラントで封鎖しておくことで、ムシ歯の発生を抑えることが可能です。

どんなムシ歯も、むやみに削るのではなく個人個人のムシ歯の原因を検査して、それぞれに見合った最小限で効果的な原因除去と修復治療を行うことが近年のムシ歯治療の最前線です。

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